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2016/08/22

Querydslで親子テーブルの複数の子レコードを親レコードの1カラムにまとめる

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「部署」と「社員」という親子関係のあるテーブルがあったとして

  • 部署1: 社員1, 社員2
  • 部署2: 社員3, 社員4, 社員5

という部署一覧を表示したい。適当に社員を結合してしまうと

  • 部署1: 社員1
  • 部署1: 社員2
  • 部署2: 社員3
  • 部署2: 社員4
  • 部署2: 社員5

という社員一覧っぽいものになってしまうが作りたいのはあくまで部署一覧なのでNG。

これをSpring Boot + Spring Data JPA + Querydslで解決する。

前提条件

今回は以下のような条件で考える。

  • Spring Boot 1.3.3利用
  • Spring Data JPA利用(基本的になるべくJPAを使いたい)
  • Querydsl 3.6.7利用
  • 動的に検索条件が変わる(つまり@Queryのような静的な構成方法は適さない)
  • 実行はGradleで行う (Maven用のソリューションはNG)
  • MySQL(MariaDB)で動作させるが開発時はH2
  • MySQL(MariaDB)はGradle実行時には起動させたくない

QuerydslでJPASQLQueryとGROUP_CONCATを使う

JPAを使ったままでgroup byを使って何とかできないかと考えたもののうまくいかない。
特にページネーションが絡むと正しいページ数を算出できなくなる。

ネイティブクエリでもいいので何とかならないと探ったところ
GROUP_CONCATがよさそうだった。
http://d.hatena.ne.jp/kkz_tech/20100803/1280802260

MySQL, MariaDB, H2でサポートされているため、
ネイティブクエリを扱えるようにQuerydslの JPAQuery クラスの代わりにJPASQLQuery クラスを使いつつ、GROUP_CONCAT関数を埋め込んでみる。

GROUP_CONCAT:
https://mariadb.com/kb/en/mariadb/group_concat/
http://www.h2database.com/html/functions.html#group_concat

DBMS依存コードの分離と使い分け

QuerydslのクラスであるJPASQLQueryの生成には、特定のDBMSのSQLTemplatesを指定する必要がある。
H2はH2Templates, MySQLはMySQLTemplatesが存在するので、それを生成するSpringのServiceとしてSQLTemplatesServiceを用意した。
@ConditionalOnPropertyでデータソースプラットフォームを参照してServiceを使い分けるようにして、SQLTemplatesServiceの実装クラスを2種類用意した。

あとはGROUP_CONCATだが、これは偶然H2/MySQLのいずれも同じ名前の関数をサポートしていた。
ただ他のDBにも対応しやすいよう分離しておく。
SQLTemplatesServicegroupConcat()を追加し、デフォルト実装としてGROUP_CONCATを使うようにした。

public interface SQLTemplatesService {
    SQLTemplates getTemplates();
    default StringExpression groupConcat(StringPath path, OrderSpecifier orderSpecifier) {
        return StringTemplate.create("GROUP_CONCAT({0} order by {1})", path, orderSpecifier);
    }
}

なおgroupConcat()SQLExpressionsにQuerydsl 4.xで追加されているようだが、今回テストに使ったSpring Boot 1.3.3時点で互換性のあるQuerydsl 3.6にはない。

プロパティspring.datasource.platformの値でServiceを使い分けるが、未指定の場合はSpring Bootと同様にH2を使うようにする。
つまり matchIfMissing = true としておく。

@ConditionalOnProperty(name = "spring.datasource.platform", havingValue = "h2", matchIfMissing = true)
@Service
public class H2SQLTemplatesServiceImpl implements SQLTemplatesService {
    @Override
    public SQLTemplates getTemplates() {
        return new H2Templates();
    }
}

GROUP_CONCAT用のフィールドを追加

GROUP_CONCATで結合した文字列は、テーブルのカラムではないので
これをプロジェクションするためのフィールドを用意する。

ここでは部署を表すクラス Departmentクラスに@Transient private String employeesListなどというフィールドを追加しておく。
(テーブルのカラムではないので @Transient が必要。)
なおこのテストプロジェクトではLombokを使っているのでフィールドに対応するgetter/setterは自動生成される想定。

そして、GROUP_CONCATを含むクエリを組み立て。
Projections.constructor()でフィールドを対応付け、
最後にSQLTemplatesService#groupConcat()を割り当てているところがポイント。

JPASQLQuery query = querydsl.applyPagination(pageable, createQuery(predicate));
List<Department> content =
    query.orderBy(department.id.asc()).list(
        Projections.constructor(
            Department.class,
            department.id,
            department.name,
            sqlTemplatesService.groupConcat(employee.name, employee.id.asc())
        ));

Querydsl SQL用のメタデータクラス自動生成

これはうまくいきそうだったが、上記抜粋コード中のcreateQuery() の中で組み立てている実際のクエリにおける leftJoin()のon句に対して、Querydsl JPAで使う自動生成クラス(Q*)だけではうまく表現しきれなかった。

パスの情報がJPA用に定義されており、純粋なSQLとして実行させると不正なSQLになってしまう。

leftJoin()のon句を省略してしまうと、条件なしに結合されてしまい
GROUP_CONCATした内容が全ての行で同じになってしまう。

正しく設定するには、やはりQuerydsl SQLのために
別の自動生成クラス(S*)を生成しなければならないらしい。
https://github.com/querydsl/querydsl/blob/0cfeeb5595e8f8924122bb1b341abce08827b07e/querydsl-jpa/src/test/java/com/querydsl/jpa/domain/sql/SAnimal.java

S*の生成には、生成時にDBに接続する必要がある。
DBからメタ情報を取得して自動生成するらしい。
http://blog.wktk.co.jp/archives/229
http://blog.physalis.net/2013/05/30/migrate-from-maven-to-gradle.html
http://www.querydsl.com/static/querydsl/3.6.7/reference/html_single/#d0e408

前提条件に書いた通り、MySQLで運用するとしても開発時にこれを必須にしたくはない。
ビルド時のH2の起動は許容できるが、H2サーバを起動すればいいのか?
Gradleプラグインを探してみたが適切なものがない。
以下は良さそうに見えたがMaven Centralなどに公開されていない模様。
https://github.com/jamescarr/h2-gradle-plugin

あれこれ試行錯誤した結果、H2は普通にインメモリで起動すれば十分だとわかった。
GroovyのSqlクラスが使える。
注意点としては、H2のドライバをSqlクラスに渡して動かす必要があるが
そのまま起動するとクラスローダがドライバを読み込んでいない。
以下を参考にして、適当な専用のconfigurationを用意して
そこでドライバ(org.h2.Driver)をロードさせることで認識するようになった。
https://discuss.gradle.org/t/jdbc-driver-class-cannot-be-loaded-with-gradle-2-0-but-worked-with-1-12/2277/3

スキーマ情報はsrc/main/resources/schema.sqlファイルにあるので、Sqlクラスにschema.sqlを読ませてメタ情報を取得し、
MetaDataExporterを実行すればS*を作成できる。

configurations {
    jdbcdriver
}

dependencies {
    jdbcdriver "com.h2database:h2"
    // ...
}

def querydslDir = file('src/main/generated')

task generateQuerydslSql {
    doLast {
        URLClassLoader loader = GroovyObject.class.classLoader
        configurations.jdbcdriver.each { File file ->
            loader.addURL(file.toURI().toURL())
        }
        def sql = Sql.newInstance('jdbc:h2:mem:', 'org.h2.Driver')
        def statements = project.file('src/main/resources/schema.sql').text
        statements.split(';').each { stmt ->
            sql.execute(stmt)
        }
        MetaDataExporter exporter = new MetaDataExporter()
        exporter.setNamePrefix('S')
        exporter.setPackageName('com.example.spring.domain.sql')
        exporter.setTargetFolder(querydslDir)
        exporter.export(sql.getConnection().getMetaData())
    }
}

これでleftJoin()のon句を正しく書くことができて、正しい結果が取得できた。

SDepartment department = SDepartment.department;
SEmployee employee = SEmployee.employee;
JPASQLQuery query = createBaseQuery(predicate)
    .leftJoin(employee).on(employee.departmentId.eq(department.id))
    .groupBy(department.id);

ページネーション

ページネーションをするためにはPageable, PageImplなどを使い、件数をカウントするクエリも必要になる。

JPA(JPQLQuery)の場合は単にJPQLQuery#count()を使えば良かったが、
JPASQLQueryを使っても、GROUP_CONCAT を使うために groupBy() をつけているせいでJPASQLQuery#count()ではユニークな結果が得られず失敗する。
select count(*)でなくselect count(department.id) とできればいいのだがやり方が見つからない。

そこで groupBy を外したJPASQLQueryを用意しておき、カウントはそちらで取得するように修正。
別途groupBy()leftJoin()をつけたJPASQLQueryを作成して結果を取得する。

private JPASQLQuery createBaseQuery(Predicate predicate) {
    SDepartment department = SDepartment.department;
    JPASQLQuery query = new JPASQLQuery(entityManager, sqlTemplatesService.getTemplates()).from(department);
    if (predicate != null) {
        query.where(predicate);
    }
    return query;
}

private JPASQLQuery createQuery(Predicate predicate) {
    SDepartment department = SDepartment.department;
    SEmployee employee = SEmployee.employee;
    JPASQLQuery query = createBaseQuery(predicate)
        .leftJoin(employee).on(employee.departmentId.eq(department.id))
        .groupBy(department.id);
    if (predicate != null) {
        query.where(predicate);
    }
    return query;
}

なお、limit/offsetやソートの調整はJPAQueryの場合は
Spring Data JPAが提供するQuerydslクラスで行っていたが、Querydsl SQL 用のものがない。
これには、Querydslクラスを参考に独自にQuerydslSQL クラスを作成した。

全体のソースコードはGitHubに登録。
gradlew bootRunしてlocalhost:8080にアクセスすれば動作確認できる。
https://github.com/ksoichiro/spring-boot-practice/tree/master/contents/20160821-querydsl-join

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